大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和28年(ネ)862号 判決

按ずるに、裁判上の和解において当事者が争の対象とした事項につき、後日和解の際の認識に反する確証が発見されたことを理由として、錯誤による和解の無効を主張し得ないことは、和解本来の効力として当然のところであり、民法第六百九十六条は正にその趣旨を規定したものに外ならない。然るところ控訴人は本件和解の為された家屋明渡請求訴訟において、被控訴人が本件家屋の所有者として所有権に基く明渡請求権を有することを争い、該所有権が訴外西川正雄に属し、控訴人は同人より家屋を賃借して適法に居住する旨主張したのであつて、被控訴人が本件家屋の所有者であるか否かは初より当該訴訟における最も重要なる争点を為していたところ、昭和二十六年九月十五日当事者双方は互譲の結果、控訴人が右の主張を撤囘する一方被控訴人は控訴人の為め昭和二十七年六月三十日迄家屋明渡を猶予し、家屋使用の損害金の要求を相当賃料額の半額に譲歩することとして本件和解が成立したものであることは、成立に争のない甲第一号証乙第四号証の一、二及び原審における被控訴本人尋問の結果により明白である。それ故控訴人が又もや前訴におけると同一の主張を蒸し返し、本件家屋の所有権が訴外西川正雄に属し、被控訴人の所有でないことが新に判明したとて、錯誤に基く和解の無効を主張することは許されぬものといわなければならない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!